
証券会社から転職するなら「求人より先」に3つの条件を決める
相場に関係なく毎月リセットされる目標。会社が推進する商品と、目の前のお客様に合う提案とのあいだで迷う瞬間。転勤や、この先の役割への漠然とした不安。証券会社で転職を考え始める理由は、たいてい1つではありません。そこへIFA、M&A仲介、PB(プライベートバンク)、コンサル、事業会社と選択肢が次々に目に入り、同期が移籍した話まで聞こえてくると、「自分も早く動くべきか」という焦りが先に立ちやすくなります。
ただ、焦って求人名と想定年収を並べても、自分に合う行き先は見えてきません。説明用の仮の数字で考えてみます。同じ「想定年収1,000万円」でも、内訳が固定給800万円の求人と、固定給400万円に成果報酬の見込み額600万円を上乗せした求人とでは、生活への影響がまったく違います。自分が下回れない金額を決めていなければ、この違いは同じ数字の中に隠れてしまいます。
転職の判断を誤りやすいのは、能力や努力の問題というより、決める順番の問題であることが多いものです。求人より先に決めるのは、何を守るか、どの経験が外で売れるか、どのリスクなら取れるかの3つです。
この記事では、この3つの条件の決め方と、そこから進路を絞る方法を、現職に残る場合からIFA、PB・ウェルスマネジメント、M&A仲介、コンサル、事業会社まで、同じ基準で解説します。
この記事の対象読者:転職するか決めきれない証券リテール営業の方
次のような状態で手が止まっている方に向けて書いています。
- 転職したい気持ちはあるが、現職の年収・看板・顧客基盤を手放してよいのか判断がつかない
- 大手の看板を外したとき、自分のリテール営業経験がどう評価されるのか分からない
- 求人を見ても、年収以外に何を比べればよいのか分からない
- 同期や先輩がIFAや外資系PB、M&A仲介へ移り、自分も早く動くべきかと焦っている
- 残るか動くかを決めきれないまま、時間だけが過ぎている
1つでも当てはまるなら、求人検索を始める前に、これから説明する3つの条件を自分に当てはめてみてください。「今は転職しない」という結論も含めて、応募の前に確かめることが具体的になります。
この記事の結論:求人を見る前に、3つの条件を決める
- 守るもの:現年収の総額ではなく、固定で入る金額で見た「年収の下限」を先に決める
- 売れる経験:会社名や売上ではなく、顧客層・成果の作り方・専門性・再現性を、応募先の需要に照らして見る
- 取れるリスク:収入の変動、自己集客、働く時間、学び直しのうち、引き受けられる変化を先に決める
- 3つが決まると、「現職に残る」「近い領域へ横展開する」「別の領域へ転換する」のうち、どの選択肢を検討に残すかを絞れる
- 現職に残る場合も、積む経験・改善を試すこと・動く条件・再判断の時期を決めれば、一つの戦略になる
求人より先に決める3つの条件:守るもの・売れる経験・取れるリスク
3つの条件は、次の順に決めます。
- 守るもの:これを割ったら転職しない、という下限。年収、勤務地、働く時間など
- 売れる経験:会社の看板を外しても評価される経験。応募先によって、評価される部分が変わる
- 取れるリスク:下限より上の範囲で、引き受けてもよい変化。収入の変動、自己集客、学び直しなど
覚えておくのは、この3つだけです。このあとに出てくる表やリストは、どれもこの3つを自分に当てはめるための道具として使ってください。
条件1|守るもの:年収の下限は「固定で入る金額」で決める
守るものの候補は、年収、勤務地や転勤の有無、働く時間、家族と合意している生活水準などです。すべてを守ろうとすると選択肢がなくなるため、「できれば維持したい条件」と「満たさなければ転職しない条件」に分けます。
このうち、最初に数字にしておきたいのが年収の下限です。次の3段階で決めます。
- 現年収を、固定給(毎月の給与)と、変動給(賞与や歩合など、業績で動く部分)に分ける
- 生活費、住宅ローンなどの返済、最低限の貯蓄を合計し、1年間に必要な金額を出す
- その必要額を、固定で入る金額だけでまかなえるかを見る。まかなえる水準が、年収の下限になる
仮の人物で当てはめてみます。
- 現年収:800万円。内訳は、固定給550万円と賞与250万円
- 1年間に必要な金額:額面で500万円
- 年収の下限:固定で500万円
この基準で見ると、想定年収が1,000万円でも、内訳の固定給が400万円の求人は下限を割ります。想定年収が650万円でも、固定給が600万円の求人は下限を満たします。現年収の800万円を基準にすると、この判定が逆になってしまいます。
金額は説明用に置いた仮定で、実際の求人条件や相場を示すものではありません。
条件2|売れる経験:証券営業の市場価値は5つの要素で見る
「売れる経験」で誤解しやすいのは、会社名と売上実績で市場価値が決まるという見方です。採用側が知りたいのは、会社の看板と商品ラインアップが変わっても成果を出せるかどうかです。その手がかりになるのが、次の5つの要素です。自分の側にある4つと、相手の側にある1つに分かれます。
自分の側にある4つの要素
- 顧客層:個人、富裕層、法人オーナー、経営者など、誰を担当してきたか
- 成果の作り方:新規開拓、既存顧客の深耕、前任者から引き継いだ資産、紹介のどれで数字を作ったか
- 専門性:株式、債券、投資信託、保険、相続、事業承継、法人、財務のどこに強いか
- 再現性:成果が出た理由を、会社の看板や商品ではなく、自分の行動や工夫で説明できるか
相手の側にある1つの要素
- 応募先の需要:1〜4の経験を、応募先がどの役割で必要としているか
5は応募先ごとに変わります。そのため、市場価値は1つの点数にはなりません。同じ1〜4でも、どの応募先に出すかによって、評価される部分が変わります。
たとえば同じ売上実績でも、自ら開拓した法人オーナーとの取引は、開拓力を求めるM&A仲介や、自分で顧客を集める型のIFAで強い材料になりやすい経験です。前任者から引き継いだ資産を深耕して作った成果は、既存顧客との長い関係を重視するPBやウェルスマネジメントでは説明しやすい一方、開拓力の証拠としては弱くなります。
証券会社での経験は、次のように分解すると、採用側に伝わる形になります。
- 新規開拓で継続的に成果を出した:仮説を立て、接点を作り、成約まで進める力として伝わる。M&A仲介、法人営業、自分で顧客を集める型のIFAで評価されやすい
- 富裕層・法人オーナーを担当した:資産、家族、事業が絡む複雑な課題を扱う力として伝わる。PB、ウェルスマネジメント、信託、IFA、事業承継の領域が候補になる
- 相続・承継・不動産を含めて提案した:複数の論点を横断し、専門家と連携する力の証明になる。信託、ウェルスマネジメント、承継支援、コンサル周辺の職種が候補になる
- 支店・チームをマネジメントした:目標設計、育成、案件管理とコンプライアンスを両立させた実績として伝わる。営業管理、研修、内部管理、IFA法人の管理職が候補になる
「実績が高いか」だけでなく、誰に対して、何をして、なぜ別の環境でも再現できるのかまで言葉にできるかが分かれ目です。
条件3|取れるリスク:引き受けられる変化を先に決める
取れるリスクは、条件1の下限を守ったうえで、どんな変化なら引き受けられるかを決めるものです。下限を割る話は条件1、下限より上で起きる変化は条件3、と分けておくと混ざりません。
- 収入の変動:年収の下限は守ったうえで、固定給の割合が下がり、成果報酬の比重が上がることを、どこまで受け入れられるか
- 自己集客:会社が用意した顧客ではなく、自分で顧客を開拓する比重が増えてもよいか
- 働く時間:労働時間、移動、顧客の都合に合わせた対応が増えてもよいか
- 学び直し:財務、資料作成、企画など、営業以外の力を一から身につける期間を取れるか
- 戻りやすさ:合わなかったとき、元の領域へ戻る、あるいは次の道へ進む見通しを持てるか
「年収を上げたい」「自由に働きたい」という希望は、たいていこのどれかを引き受けることと対になっています。引き受けられる変化を先に決めておけば、条件の良さそうな求人を見たときに、その代わりに何を引き受けるのかを確かめられます。
証券会社からの転職先の全体像と、3つの条件からの絞り方
辞めたい理由の「原因の層」で、合う方向が変わる
進路を見る前に、辞めたい理由の原因がどの層にあるのかを分けておきます。層によって、解決できる方向が違うからです。
| 原因の層 | 例 | 変わり得る方向 |
|---|---|---|
| 個別の要因 | 上司、部署、勤務地、担当する顧客 | 社内異動、担当変更 |
| 会社の要因 | その会社の評価制度、商品の推進方針、転勤制度 | 制度や方針の違う会社への転職(他の証券会社、PB、IFA法人など) |
| 業界構造の要因 | 対面のリテール営業に共通する、短い周期の収益目標 | 収益の仕組みが違う仕事への転換(法人・案件の領域、事業会社など) |
業界構造の要因を、同じ仕組みの会社へ移って解決することはできません。不満がどの層にあるかによって、次の3方向のどこを見るかが変わります。
証券リテール営業の進路は「残る・横展開・転換」の3方向
証券会社からの進路は、「金融の中か外か」よりも、これまでの経験をどう使うかで分けると比べやすくなります。金融の中にも、経験がそのまま活きる仕事と、学び直しが要る仕事が混ざっていて、「中か外か」では引き受ける代償の違いが見えないからです。
| 方向 | 主な選択肢 | 活かせるものと、引き受ける代償 |
|---|---|---|
| 証券会社に残る | 現職維持、社内異動、社内公募 | 現年収・看板・既存顧客を維持できる一方、不満の原因が変わらないまま時間が過ぎる可能性を引き受ける |
| 資産運用・富裕層領域へ横展開 | IFA(正社員・業務委託)、PB、ウェルスマネジメント、信託、他の証券会社 | 顧客対応力・商品知識・富裕層対応を活かせる一方、選択肢によっては、顧客獲得・収入の変動・事務負担の一部を自分で引き受ける |
| 法人・事業領域へ転換 | M&A仲介、コンサル、金融ベンチャー、事業会社 | 開拓力・経営者との接点を活かせる一方、成果が出るまでの期間の長さ、労働強度、営業以外の力の学び直しを引き受ける |
この記事では、外へ出る2方向を先に見たあと、最後に「残る」を同じ基準で検討します。外へ出る場合の代償を知ってからのほうが、残る価値を正しく測れるためです。
3つの条件から、検討に残す選択肢を絞る
3つの条件が決まると、検討に残す選択肢と、今は外す選択肢が分かれます。目安は次のとおりです。
| 3つの条件で決めたこと | 検討に残りやすい選択肢 | 今は外れやすい選択肢 |
|---|---|---|
| 下限が高く、収入の変動は取れない | 現職維持・社内異動、固定給中心のPB・ウェルスマネジメント・信託、会社が顧客を集める型の正社員IFA | 固定給のない業務委託のIFA、固定給が下がる事業会社・金融ベンチャー |
| 自己開拓の実績があり、収入の変動を取れる | 自分で顧客を集める型のIFA、M&A仲介 | 経験だけでは外れない。年収の下限と働く時間の条件で絞る |
| 働く時間・勤務地を守りたい | 社内異動、勤務地を限定できる求人 | 労働時間や移動が増える可能性のある仕事(M&A仲介、コンサルなど) |
| 営業以外の力を学び直したい | コンサル、事業会社・金融ベンチャー、M&A仲介 | 営業成果だけで評価が決まる仕事 |
条件1の例に挙げた、年収の下限が固定で500万円の人が、「実績の中心は自分で開拓した法人オーナー」「成果報酬の比重が上がることは受け入れられるが、固定給がなくなることは受け入れられない」と決めたとします。検討に残るのは、固定給が下限を満たすことを前提に、M&A仲介、自分でも顧客を集める型の正社員IFA、そして現職での法人担当への異動です。固定給のない業務委託のIFAは、今は外れます。
検討に残すのは、性質の違う2〜3の選択肢までにします。1つに絞ると比べる相手がなくなり、増やしすぎると一つひとつの確認が浅くなるためです。
ここまでを自分に当てはめると、自分だけでは埋まらない部分が出てきます。年収の下限は自分で決められますが、「自分の経験がどの応募先でどう評価されるか」と「求人ごとの固定給と成果報酬の内訳」は、公開されている情報だけでは確かめきれません。「証券転職」では、転職するかどうかを決めていない段階でも相談できます。面談は、野村證券出身でアドバイザーナビ代表取締役の松岡隼士が担当し、この2点を一緒に確かめます。相談のゴールは、年収の下限と、検討に残す選択肢を決めて持ち帰ることです。
転職先別に見る、証券経験が評価される点と引き受ける代償

「リテールの経験はつぶしが利かない」と言われることがあります。実際には、評価される転職先と、そうでない転職先があります。評価される点と、その代わりに引き受ける代償は、転職先ごとに違います。ここでは、外へ出る2方向の主な選択肢を順に見ていきます。
IFAへの転職:バック率より先に、働き方の型と4つの確認項目を見る
IFAは、一般に「独立系ファイナンシャルアドバイザー」を指す呼び方です。金融商品仲介業者として登録した会社(以下、IFA法人)に所属し、提携先の証券会社の口座と商品を使って、顧客に資産運用を提案します。
「自由に働ける」面が語られがちですが、IFAの働き方は1つではありません。求人を見るときは、まず次の2つの軸で、どの型にあたるのかを確かめます。
- 誰が顧客を集めるか:会社が主に集める型、会社と自分の両方で集める型、自分が主に集める型がある
- 誰が収入の変動を負うか:正社員は固定給があり、変動が小さい。業務委託は固定給のない契約もあり、収入の変動と経費を自分で負う
会社が集めた顧客を正社員として担当する型は、証券会社の働き方に近い形です。この型で確かめるのは、顧客が実際にどの程度供給されるのか、担当する顧客層、評価制度です。一方、自分で顧客を集める型、とくに業務委託では、会社が担っていた顧客獲得、収入の安定、事務の一部を自分で引き受けます。この場合は、次の4つの確認項目がすべて重くなります。
- 顧客との関係性:顧客は会社の看板を信頼しているのか、担当者個人との関係を重視しているのか
- 規程・情報管理・顧客説明:退職前後の対応を、所属先の規程・契約・法令に沿って進められるか
- 商品・口座の移管可能性:顧客に必要な商品を移籍先の提携証券会社で扱えるか、口座や商品を移管できるか
- 初年度の収益・生活設計:収入が安定するまでの期間を、何カ月分の生活資金で乗り切れるか
顧客との関係が深いこと、退職後に適切な手順で接点を持てること、商品や口座を移せることは、それぞれ別の問題です。関係が深くても、前職の規程、顧客側の事情、商品の取り扱いの違いによって、移管が想定どおりに進まないことは起こり得ます。この3つを1つに混ぜたまま収入を見積もると、初年度の計画が崩れます。
4つ目の収益は、数字で試算しておきます。固定給のない業務委託へ移ると、毎月入っていた固定給がなくなります。そこで、条件1と同じ仮の人物について、1年間に必要な金額の500万円を軸に試算します。
- 1カ月に必要な金額:500万円÷12カ月=約42万円
- 報酬の入金が安定するまで、仮に6カ月かかる場合:約42万円×6カ月=約250万円を、手元の資金でまかなう
金額と6カ月という期間は説明用の仮定で、実際の期間は顧客の状況や契約によって変わります。短い場合と長い場合の両方で試算しておくと安全です。
バック率(顧客から得た手数料などの収益のうち、自分に配分される割合)の高さは、この立ち上がりの期間を乗り切れて初めて意味を持ちます。手取りの見積もりは、「収益×バック率」から、在籍料やシステム利用料などIFA法人へ支払う固定費、交通費などの経費、税・社会保険料を引いて行います。バック率が手数料の総額に掛かるのか、提携先の証券会社の取り分を引いた後の金額に掛かるのかも、法人によって異なります。
所属するIFA法人を比べるときは、バック率に加えて、固定費の内訳、提携先の証券会社と扱える商品、コンプライアンスの運用、事務の支援範囲、集客と教育の支援を確かめます。移籍後に、所属先、手数料、扱える商品を顧客へ説明するのは自分自身です。その体制を、自分の言葉で納得して説明できるかどうかも判断材料になります。
PB・ウェルスマネジメントへの転職:目標は形を変えて残る
PBやウェルスマネジメントは、富裕層や企業オーナーを対象に、資産運用に加えて相続、事業承継、不動産なども含めた提案を行う仕事です。信託銀行や、他の証券会社の富裕層部門も、同じ横展開の選択肢に入ります。
- 評価されやすい経験:富裕層・法人オーナーの担当経験、相続や承継の課題を見つけて提案した経験、社内の専門部署や税理士などと連携した経験
- 引き受ける代償:収益や預かり資産の目標は、形を変えて残る。会社によっては、対象とする顧客層の水準が上がり、成果への要求も強くなる
- 入る前に確かめること:担当する顧客層の定義と資産規模、顧客を会社が用意するのか自分で開拓するのか、チーム制か個人担当か、目標の内容と評価の周期
辞めたい理由が「会社の要因」にある場合は、制度や方針の違う会社へ移ることで変わる部分があります。一方、理由が「業界構造の要因」にある場合は、同じ仕組みの中での移動になるため、目標の形が変わるだけで終わる可能性があります。また、PB、ウェルスマネジメント、IFAは、顧客層が近くても働き方が異なります。同じものとして比べず、顧客を集める主体と報酬の仕組みを分けて確かめてください。
M&A仲介への転職:開拓力に加え、財務と「成約までの長さ」が要る
M&A仲介は、会社を譲りたい経営者と、買いたい会社を引き合わせ、成約まで支援する仕事です。証券リテールの新規開拓力や経営者対応の経験が評価されることのある転職先ですが、「証券営業の延長で年収が上がる仕事」と捉えて入ると、入社後に想定との差が大きくなります。
- 評価されやすい経験:経営者への新規開拓、法人オーナーとの信頼関係づくり、目標に対する活動量の管理
- 新たに要る力:決算書などの財務資料の理解、論点の管理、社内外の調整、長期間にわたる交渉の推進。営業実績を分解しても出てこない力なので、どう身につけるかまで考えておく
- 報酬の時間軸:成約時の成功報酬を収入の柱とする会社では、社員のインセンティブも成約に連動する。成約まで年単位かかる案件もあるため、入社後しばらくは固定給だけで生活する前提で収支を見る
- 案件の探し方(ソーシング):譲渡を検討する経営者を、紹介、既存の案件、自己開拓のどの比重で見つけるのかは、会社と役割によって異なる
- 働く時間:案件数、移動、資料作成、顧客の都合に合わせた対応を含めた働き方が、条件1と条件3で決めた範囲に収まるか
目標がなくなるわけではありません。月次の手数料目標の代わりに、面談数などの活動量と、年単位の成約が問われるようになります。成果が毎月の数字として見える仕事から、成約が出るまで成果が見えない期間の長い仕事へ変わるため、証券会社で目標に応えてきた経験が、そのままこの時間軸に合うとは限りません。固定給の水準と、自分の役割で自己開拓がどの程度求められるのかは、入社前に確かめておきます。
コンサル・事業会社への転職:職種名ではなく役割で選ぶ
コンサルで問われるのは、売上実績そのものより、課題を分解し、資料にまとめ、関係者と議論して動かす力です。
- 評価されやすい経験:金融機関の業務、商品、顧客についての現場の知識。金融機関向け、資産運用、富裕層ビジネスなど、自分の経験とつながるテーマがあるほど伝えやすい
- 引き受ける代償:営業実績は直接の評価材料になりにくく、論点の分解や資料作成を一から学び直す。選考でも、ケース面接など営業とは別の準備が要る場合がある
- 入る前に確かめること:扱う領域(戦略、業務、ITなど)、働く時間と出張、評価の仕組み
金融ベンチャーや事業会社は、「事業会社」という言葉だけでは仕事内容が広すぎます。顧客開拓、提携先の開拓、企画、カスタマーサクセス(導入後の顧客支援)のどれを担うのかで、日々の仕事はまったく違います。
- 評価されやすい経験:顧客の課題を聞き出す力、金融機関や法人顧客との関係づくり、目標に向けて行動を積み上げる力
- 引き受ける代償:大手証券の看板と研修制度がない環境で成果を出す必要がある。固定年収が現職より下がる場合は、代わりにどの経験を得られれば納得できるかを決めておく
- 入る前に確かめること:担う役割と評価指標、金融の経験が必須なのか歓迎条件なのか、事業の段階と収益の状況
領域を変える前に、合わなかった場合の「次の一手」を考えておく
領域を大きく変えるほど、合わなかった場合の動き方を先に考えておきます。道は2つあります。
1つは、元の資産運用・富裕層の領域へ戻る道です。この場合は、離れていた期間と、その間に何をしていたかを説明することになります。もう1つは、新しい領域で得た経験を使って次へ進む道です。M&A仲介なら経営者対応と案件を進めた経験、コンサルなら課題の分解と資料化、事業会社なら事業を進めた経験が、次の転職で説明できる材料になります。
どちらの道も描けない選択肢は、条件3の「戻りやすさ」に照らして慎重に判断します。
証券会社に「今は残る」が合理的なケースと期限の決め方
外へ出る選択肢の代償を見たうえで、「今は残る」ほうが合理的なケースもあります。次のような場合です。
- 現在の固定給が高く、年収の下限を満たす選択肢が外にほとんどない
- 辞めたい理由が、上司・部署・勤務地などの個別の要因に近く、社内異動で変わる可能性がある
- 開拓実績、富裕層対応、法人オーナーとの接点をもう一段積むと、検討に残せる選択肢が増える
- 家庭や勤務地の制約が大きく、今動くと選択肢が狭くなりすぎる
このうち1つ目と3つ目は、外の求人の条件や評価のされ方を知らないと判定できません。残ると決める前に、求人の情報収集や転職エージェントへの相談で、外の条件を一度確かめておく価値があります。
ただし、期限も目的も決めずに残るのは、判断の先送りです。戦略として残るなら、次の4つを決めます。
| 決めること | 具体例 |
|---|---|
| 積む経験 | 法人オーナー担当、富裕層、相続・承継、マネジメント、財務・資料作成 |
| 改善を試すこと | 社内異動、担当変更、勤務地希望、社内公募 |
| 動く条件 | 希望した異動が実現しない、年収が下限を下回る見込みになる、外で評価される実績が整う |
| 再判断の時期 | 半年後、評価後、異動結果後など、具体的な時点を置く |
この4つが決まっていれば、残る期間は次の選択肢につながる時間になります。今の会社の環境を使って、職務経歴書に書ける実績を作る期間にもできます。たとえば、法人オーナーとの新規の接点を自分の開拓で作る、富裕層向けの施策や社内公募に手を挙げる、相続・承継の案件に同席させてもらう、といった行動です。どれも、次に動くときに「誰に対して、何をしたか」を語る材料になります。
逆に、期限も目的もなく残ると、不満だけが続き、動くための材料は増えません。
証券会社を辞めたい理由は「次に実現したいこと」へ言い換えて確かめる
方向が見えてきたら、最後に辞めたい理由を確かめ直します。不満を「次に実現したいこと」へ言い換え、それが現職では本当に実現できないのかを自分に問う作業です。
| 現職で感じていること | 次に実現したいこと |
|---|---|
| 個人向けの短期目標がきつい | 経営者・法人・富裕層に対し、より長い時間軸で課題解決に関わりたい |
| 商品推進に違和感がある | 顧客の課題を起点に、複数の選択肢を組み合わせる提案へ軸足を移したい |
| 転勤を避けたい | 特定の地域で、顧客との関係や専門性を継続して積み上げたい |
| 看板がなくても通用するのか不安 | 会社の看板や商品に頼らず、自分の開拓と提案で成果を出せることを確かめたい |
なお、「年収を下げたくない」は辞めたい理由ではなく、条件1の守るものにあたります。転職理由とは分けて扱います。
言い換えただけでは、まだ足りません。確かめるのは、「それは現職でもできるのではないか」という問いへの答えです。原因の層に沿って、現職で試したこと、それでも変わらなかった事実、だから転職先のどの仕組みが必要なのか、という順で説明できるかを確かめます。
説明できなければ、原因は個別の要因や会社の要因にあり、社内異動や、同じ領域の別の会社で解決できるかもしれません。説明できれば、それがそのまま選考で伝える転職理由になります。面接で問われやすいのも、この点だからです。
証券会社の方が「証券転職」に相談する意味
3つの条件を決めることも、辞めたい理由を確かめ直すことも、時間をかければ一人で進められます。難しいのは、それを目の前の求人に当てはめる作業です。同じ年収表記でも、固定給、成果報酬、自己負担の費用の内訳は求人ごとに違います。同じ証券経験でも、IFA、PB、M&A仲介、コンサルのどこに出すかで、評価される部分が変わります。そして求人票には、現職に残る価値も、合わなかった場合の次の一手も書かれていません。
相談相手を選ぶときに、知っておきたい仕組みがあります。転職支援サービスは一般に、転職が成立して初めて求人企業から手数料を受け取ります。アドバイザーナビが運営する「証券転職」も同じです。この仕組みには、転職を勧める方向に力が働きやすいという面があります。
そのため証券転職では、今すぐ転職する予定のない方の相談を受け付け、「今は残る」「実績を積んでから動く」という結論も選択肢に含めて話すことを前提にしています。見立てを誤ったまま入社し、早い段階で合わなくなることは、ご本人にとっても、紹介した側にとっても、採用した企業にとっても損失になるからです。相談の場で、残る場合の話が出てくるかどうかは、相談相手を見極める目安にしてください。
証券転職は、証券会社出身者が、証券会社の方の転職を支援するサービスです。面談は、運営会社アドバイザーナビの代表取締役である松岡隼士が、すべて担当します。松岡は野村證券の出身で、営業店での富裕層向け資産運用アドバイザー業務と、本社での資産承継コンサルティング業務を経験しています。
相談すると確かめやすくなる点は、2つあります。
- 証券会社特有の事情を前提に話せる:支店の目標運営、商品の推進、転勤、顧客との関係を一から説明する必要がありません。辞めたい理由の原因の層を分け、経験を5つの要素に分解するところから相談を始められます
- IFAを検討する場合は、求人票に書かれにくい項目まで確かめやすい:運営会社のアドバイザーナビは、富裕層とIFAのマッチング事業と、IFAのコンサルティング事業も行っており、初年度の収支、集客の主体、法人の管理・事務体制を確かめる際の論点を持っています
相談では、年収の下限、応募先ごとに評価される経験、引き受けられる変化の3つを、実際の求人条件と照らし合わせます。持ち帰っていただくのは、次の3つです。
- 現職維持を含めて、検討に残す選択肢
- 次に確かめる項目(求人ごとの固定給と成果報酬の内訳など)
- 残る場合・動く場合それぞれの、再判断の時期
証券会社からの転職相談でよくある質問
- まだ転職するか決めていないのに、相談してもいいのでしょうか?
-
はい、問題ありません。迷っている段階のほうが、現職に残る価値、外へ出る場合の選択肢、今後積むべき経験までを同じ基準で比べられます。「今は残る」「あと1年実績を積んでから動く」という結論になっても構いません。相談した時点で、転職や応募を決める必要はありません。
- 相談したことが、現在の勤務先に知られる心配はありませんか?
-
転職支援サービスには、職業安定法と個人情報保護法にもとづき、個人情報を適正に管理する義務があります。証券転職でも、相談した事実や経歴を、ご本人の同意なく第三者(現在の勤務先や求人企業を含みます)へ提供することはありません。運営会社のアドバイザーナビ株式会社は、プライバシーマークの付与を受けています。
応募したくない企業や、情報を伝えてほしくない企業がある場合は、面談の最初にお伝えください。あわせて、社用のパソコンやメールアドレスを転職活動に使わない、社内で不用意に話題にしない、といったご自身の側の注意も必要です。
- リテール営業の経験しかありませんが、対象になりますか?
-
はい、対象になり得ます。リテール営業の経験は、顧客層、成果の作り方、専門性、再現性によって、評価される応募先が変わります。「営業しかしていない」とまとめず、新規開拓、富裕層対応、法人オーナーとの接点、相続・承継などへ分解して、言葉にしていきます。
- 年収を下げたくないのですが、相談する意味はありますか?
-
あります。年収を守りたい方ほど、現年収を固定給と変動給に分け、年収の下限を先に決めておく必要があります。現職の条件が良い場合は、転職だけでなく、社内異動や、実績を積んでから動く選択肢も含めて比べます。
- IFAやM&A仲介、コンサルなど、証券会社以外の方向も相談できますか?
-
できます。証券転職は証券会社の方の転職支援に特化したサービスですが、運営会社のアドバイザーナビは、IFA特化の「IFA転職」やM&A特化の「M&A転職」も運営しています。どの選択肢を検討に残すかの相談は、コンサルや事業会社、現職維持や社内異動も含めて行えます。求人のご紹介は、その時点で取り扱いのある範囲に限られるため、面談でご確認ください。IFAやM&A仲介に方向が定まった場合は、各サービスをご案内することがあります。
- 相談や転職支援に費用はかかりますか?
-
証券転職では、面談での相談やサポートを含め、すべてのサービスを無料で利用できます。求人企業から受け取る手数料で運営しているため、転職を希望する方に費用は発生しません。
- 顧客移管や退職前後の対応も相談できますか?
-
IFAを検討するうえで、顧客との関係性、移籍後の受け皿、顧客への説明は避けて通れない論点です。ただし、在職中の顧客情報持ち出しや不適切な勧誘を前提にはせず、所属先の規程、契約、情報管理、法令上の確認が必要な項目を一緒に洗い出します。個別の法的判断は、所属先や専門家への確認が必要です。
まとめ:証券会社からの転職は、求人票を開く前に「3つの条件」を決める
証券会社からの転職で判断を誤りやすいのは、能力や努力が足りないからというより、決める順番の問題であることが多いものです。
現職維持、IFA、PB・ウェルスマネジメント、M&A仲介、コンサル、事業会社は、年収の数字だけでは比べられません。まず、何を守るか、どの経験が売れるか、どのリスクなら取れるかを決めます。外へ出るなら、年収の下限と、新たに引き受ける代償を確かめます。残るなら、積む経験、改善を試すこと、動く条件、再判断の時期を決めます。そこまで決めて初めて、求人票が自分の判断材料になります。
今日できることもあります。現年収を固定給と変動給に分けて年収の下限を出すこと、そして、残る場合の再判断の時期をカレンダーに入れることです。
今すぐ転職を決める必要はありません。アドバイザーナビの「証券転職」では、野村證券出身の代表取締役・松岡隼士が面談を担当します。求人を紹介する前に、年収の下限、証券経験がどの応募先で評価されるか、現職に残る価値、検討に残す選択肢を一緒に確かめます。「今は動かず、実績を積む」という結論も含めて、次の判断の時期を決めるところまで進めます。